科学か、芸術か?田淵行男 細密画の全容(安曇野市)

2012年8月5日 by Yuichi Kasai

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2012年8月5日まで安曇野市豊科近代美術館で行われていた、『科学か、芸術か?田淵行男 細密画の全容 』 展は、田淵氏のライフワークといえる蝶の細密画原画を軸として、前期、中期、後期とその作風と意識の変遷を、また戦時中に疎開した安曇野の地が蝶の生態観察に最適だったこともあり、特に『高山蝶 』 というカテゴリにおいての研究に心身を注いでいた様子を強く感じさせるものでした。
細密画と言えばスーパーリアルや写真などと比べられがちですが、解説にもある通り、ただ対象を書き写すだけではなく田淵氏の蝶に対する畏敬のような感情が面相筆の軌跡に宿るように、彼の心象風景のようにも観えるところに芸術性を感じました。

彼の作品の蝶は大概左向きに描かれ、限りなく正確に描かれているようで、実は体の体毛と足関節の有り様は精細のようで大胆な印象を受けました。カマキリにも見られる偽瞳孔などの表現もしかりです。しかし一歩作品から離れて観た時、パーツの有り様よりも羽の周囲に縁取られた影の雰囲気などによって『細かさよりも量感(存在感)』を紙の中に留めようとしていたのではないか。という感覚を強く持ちました。それは、非常に生々しく女性的で強い覚悟のようなもので、彼の作品に掛ける気持ちを垣間みた感じでした。ここでも科学者よりも芸術家の心象が感じられる部分でした。

田淵行男記念館(※上記写真)へ移動すると、田淵氏が撮影した名作となっている30点の作品を観ることができました。ここでは上記細密画とはうって変わり、昆虫や自然界に注がれる田淵氏の温かい心が感じられました。『黒い蝶』という作品は、枝葉に留まり、羽を重力に任せたような姿は大きく引き伸ばせて飾りたい!と感じるものでした。
記念館の周囲はクラフトのお店などと繋がっており、規模は小さくも、わさび田が囲み、水に足を晒せる場所もあって意外と隠れ避暑地な処だと思いました。
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