80s モード

2007年9月27日 by Eiji Saito

先々月号の『HUgE』に続くようにして、『BRUTUS』(今月15日発売号)が80sファッションを特集しています。なぜいま80sなのでしょう。確かに、あの時代特有の煌びやかさが、かつて日本が自信に満ち溢れていた時代、少し明るすぎる享楽の記憶を伴って思い出されるというのはあるかもしれません。

 

でも現在第一線で活躍するファッションデザイナーやフォトグラファーに注目してみると、実は80年代の表側の煌びやかさよりも、むしろ文化的にはマージナルだった事象にこそ拘りをもっているように思えてなりません。

 

たとえば、『HUgE』で紹介されているとおり、およそ3年にわたってディオールのメンズラインを牽引してきたエディ・スリマン。彼によるディオール・オムとしての最後の仕事は、どうやらニューウェイヴがテーマということらしいのですが、そういえばエディ・スリマンは68年生まれ。まさしく80s ニューウェイヴを聴いて育った世代には違いなく、確かに彼のつくりだすシルエットからは、どことなくあの時代特有の香りが立ちこめてきます。重く引き摺るようなリズムと実験的な音、内省的な歌詞、そしてグラマラスな髪型。そんなニューウェイヴの音楽とスタイルにぴたりと寄り添うファッションが、あくまで現代に介入するようなしかたで取り入れられています。

 

そして『BRUTUS』が特集するのは、80年代にエポックメイキングだった映画作品のイメージに合わせたファッションフォト。こちらも大衆的な雰囲気からはほど遠いカルト的な映画『ブレードランナー』のイメージなど、当時デッドテックフューチャーなどと呼ばれた退廃的な感覚を反映させた、なかなかマージナルでありつつ、それでいて紛れもなく80sリバイバルなヴィジュアルです。

 

これは個人的な嗜好に起因しているのかもしれませんが、面白いことに、比較的最近であるはずの2000年以降の文化的キーワードといわれても即座には出てこないような気がするのに対し、80年代の妖しげなサブカルチャーのそれは、ほとんど絶対的なインパクトとして刷り込まれてしまっています。モードに限っても、ワイズやギャルソンを代表する「モードの黒」は、一つのオブセッションとして生涯抱えることになりそうです。

 

『HUgE』で久しぶりに姿を拝見したニック・ナイト。ワイズやギャルソンのヴィジュアルをこれ以上ない存在感で際立たせてみせた彼もまた、あの時代の空気感を携えたまま、現代を颯爽と渡り歩いています。単なる懐古主義ではなく、身体に浸透しているがために必要とし、表現してしまうようなセンス。80年代のマージナルな文化に影響を受けた端くれの一人として、(便利な言葉ではありますが)リスペクトせざるをえません。

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