透層する建築、まつもと市民芸術館

2008年1月8日 by Eiji Saito

geijutsukan.jpg それが仕事がらみではあったとしても、松本市の主要な文化施設を巡ってみるのは純粋に楽しい経験です。先日、およそ半日ほどかけて休日にそれらを見て回り、次々と写真におさめていったのですが、折々に気づくのは松本市の新旧文化における凝縮度の高さ。

悠久の歴史を感じさせるものから最新の技術を惜しみなく導入したものまで、それぞれに見ごたえがありますが、今回特に感銘を受けたのが、クラシック音楽祭サイトウ・キネン・フェスティバル松本の主要会場としても知られる、伊東豊雄の設計による「まつもと市民芸術館」。

これまでにも何度か通りかかることはあったのですが、今回初めて実際に中へと入り、その空間を闊歩することで、改めて伊東氏のユニークな建築ポリシーを感受することができたような気がします。伊東豊雄の設計思想を貫くのは、これまで『風の変容体』や『透層する建築』といった、主要な著作で提唱されてきた「柔軟な」建築ですが、この「まつもと市民芸術館」にもその片鱗を如実に窺うことができるのです。

geijutsukan1.jpgたとえば見事に湾曲し、空中に浮遊するかのようなガラスのファサード、近未来的な曲線美が目をひく内部空間の広がり、壁に穿たれた穴と間接的な光との絶妙なバランス......。さらに屋上に上がれば、芝生の広がる空中庭園といったところ(もちろん一般に開放しているのですが、とはいえ冷気のつのる冬の間は少しつらいかも)。

そんなぐあいで、伊東建築の代表作の一つに数えられる「せんだいメディアテーク」などに見ることのできる、あの物質としての重さを感じさせない建築の妙技のエッセンスが、ここ松本市にも息づいているというわけです。

 

もっとも、そんな前衛的で優雅なこの芸術館、着工当初は建設反対の声も多かったらしく、一時は建設続行が危ぶまれる時期もあったのだとか。これだけ凝った造りともなれば当然ながら莫大な費用がかかるわけで、ご多分にもれず税金の無駄遣いとの声がどこからともなくあがったということでしょう。それも一理はあるのでしょうけれど、文化の育たない都市ほど魅力のないものもないのだし、ここはどうにか発想の転換をしてみたいものです。自らの都市の文化隆盛の段階に立ち会いつつ、魅力ある空間に浸ることができるのですから。 

geijutsukan2.jpg公式WEBサイトのプログラムを見ると、渋さ知らずの公演をはじめ、カフカの『失踪者』、ミラン・クンデラ原作の『ジャックとその主人』など、なかなかに興味深いラインナップ。さらに今後の予定を覗いてみると、敬愛する勅使河原三郎の名が。。なにやら『空気のダンス』と題し、発掘した若い才能を前面に押し出した内容になるらしく、その絶えざる挑戦の姿勢に俄然期待が高まってしまいます。

 

透層する建築物に乱舞する身体の流れといったコラボレーションのキャッチコピーなど想像したくもなりますが、なんにせよ、もし行けるようであればこころして臨みたいところ。魅力ある空間と公演があるかぎり、市民の足を何かがそこへと向かわせずにはいないでしょう。

 

まつもと市民芸術館公式サイトはこちら

  • Index
  • Back
  • Index
  • Back
  • スマートフォンサイト構築

スタッフ

  • 平竹仁士
  • 河西裕一
  • 柳澤健一
  • 小林秀太郎
  • 丸山幸男