SF界の巨匠アーサー・C・クラーク、地球村の彼方へ

2008年4月2日 by Eiji Saito

SF(サイエンス・フィクション)界の大御所、アーサー・C・クラークが先月に亡くなっていたとのことで、追悼と少しばかりの思い出を。もはやクラークの良き読者とはいえない私ですが、それでも十代の頃にはクラークのSF小説には随分と胸ときめかされたものです。

 

 その頃は、よくいわれるSF三大巨匠の作品を矢継ぎ早に読み進めていた時期で、アシモフのロボット工学、ハインラインの宇宙における戦争、そしてクラークの宇宙そのもののビジョンに、それぞれ強く魅かれていました。

 

『2001年宇宙の旅』や『幼年期の終わり』といったファーストコンタクトものももちろんよいのですが、個人的には『都市と星』でしょうか。未来永劫輝き続ける都市ダイアスパーと、その実、隠蔽され打ち捨てられてきた宇宙という設定の印象はいまだに鮮明なのだから不思議。ダイアスパーの存在などは、現在第一線で活躍する建築家たちにもユートピア都市としてのインパクトを強く残しているに違いありません。

 

二十代の頃にはセンス・オブ・ワンダーに満ちたSF(サイエンス・フィクション)から、徐々に思弁を意味するSF(スペキュラティブ・フィクション)へと興味の対象が移り、SFは読むとしても内側の宇宙(つまり人間?)をテーマとしたフィリップ・K・ディックやJ・G・バラードばかりになってしまったような気がします。大人になるにつれ、クラークの巨視的なビジョンがあまりに純粋でナイーブに思えてしまったせいかもしれません。

 

比較的後年になって、クラークは『地球村(グローバル・ヴィレッジ)の彼方』を世に問うています。通信技術の未来がやがて「世界は一つ」の実現を可能にするという、ほとんど願いにも近いメッセージが主題です。これまた欧米的主観に貫かれた正義ということもできるでしょうけれど、WEBの世界そのものでもあることを考えてみると、切実なものを感じないわけにはいきません。

 

クラークの作品を今後読み返すことがあるかどうかわかりませんが、とにかくもセンス・オブ・ワンダーに胸を焦がすことのできた若い日の記憶は、いつまでも大切にしまっておきたいものです。 

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