マラルメはGoogleブック検索の夢を見るか

2009年7月2日 by Eiji Saito

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「世界は一冊の書物に至るためになりたっている」
言葉による形而上学的完成を夢想した詩人ステファヌ・マラルメ。あるいは書物の集合を無限の天体へと結びつけるボルヘスの<バベルの図書館>でもよいのでしょうが、これらのヴィジョンが美しいのは、きっとその前提に不可能という諦念が横たわり、それが逆に夢想家たちのロマンを否応なくかきたててしまうからでしょう。

ところがご存じGoogleなど検索サービスの出現によって、全世界のデータベース化という想念がリアリティを持ち始めています。当初、それこそ「ヤホー」や「ゴーグル」などとギャグにもならずに間違われつつ連呼されていた頃、WEBによる検索サービスというものが秘めている限りない可能性に気付いていた人がどれだけいたでしょうか。
(思いきりマイナーなバンド名で検索をかけてヒットしたときの狂喜乱舞も今は昔......)

そんな巨大なデータベース生成エンジンの雄、Google社が提供するブック検索。著作権などを巡っての問題がなにかと話題を振りまいたサービスですが、米Google社と米国作家組合・出版社協会会員社との和解が成立したとのニュースも記憶に新しいところ。

考えてみれば書店では誰もが罪悪感をさほど感じることもなく立ち読みはしているわけで、著作権が切れるまでの間はスキャン内容の一部のみを表示する(つまり拾い読み)というのは案外理にかなっているような気がしないでもありません。実際、内容の続きが気になって書籍の購入に至るケースもありそうです。

これまで大学図書館などが所蔵する書籍のデジタル化を中心に進められてきたようですが、現時点で既に700万冊以上(!)の書籍がデジタル化されているらしく、そうはいってもスキャンは1ページずつアナログな方法でやっていたのかと思うと気が遠くなるのと同時に、たまに乱丁ならぬ乱スキャンも見受けられたりもして、それがまた妙に微笑ましくもあったりなかったり。天体への道は険しい。

それにしても最初に目を付けたのが大学図書館とは、Google社もなかなかの策士、いえ慧眼といえそうです。なんといっても大学人こそは「一なる真理」へと日々邁進する人々のことを指すのですから(本当か?)。

ここでこちらもマラルメ的夢想を働かせてみたくもなりますが、「やがて世界は一つの情報ネットワークへと収斂する」かどうかはともかく、夢を紡ぐにもまた戦略が必要ということでしょうか。



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