「マラルメ・プロジェクトII 『イジチュール』の夜」舞台

2011年8月16日 by Eiji Saito

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8月14日、京都芸術劇場にて「マラルメ・プロジェクトII 『イジチュール』の夜」の公演が行われ、しばし夢の時空に浸ることに。
 
【企画】 浅田彰、渡邊守章
【構成・演出】 渡邊守章
【朗読】 渡邊守章、浅田彰
【音楽・音響】 坂本龍一
【映像・美術】 高谷史郎
【ダンス】 白井剛、寺田みさこ



およそ考えうる限り最強の布陣――

昨年、実に足掛け20年にも及ぶ歳月をかけ、ついに完結となった『マラルメ全集』。その難解をもって知られるマラルメの詩にあっても特に解釈が困難とされ る『イジチュール』の翻訳に果敢にも挑戦された渡邊守章氏。自身の翻訳された日本語とフランス語を織り交ぜた朗読には鬼気迫るものが。

その渡邊氏と朗読パートを分担するかたちで朗々と響きわたる浅田彰氏の声。「坂本+高谷」とは『LIFE』でのコーディネート以来、高いテンションを維持 されているとお見受け。時代の旗手も、いまや京都造形芸術大学の大学院長。そんな立場になっても(だからこそ?)自ら高度なクオリティでアートを実践してみせるわけだから、生徒側も高い意識をもたずにいられないでしょう。

高谷史郎氏は個人的に最も尊敬する映像作家の一人。dumtypeでのインスタレーションはメディアを介して追いかけてきたかたちですが、今回はしっかりライブで体験。見事にマラルメ的宇宙を生成されていました。すべてのモーショングラフィックを凌駕する・・・などという表現ではとても足りない。漆黒の闇と星屑の光の対比、生まれゆく詩人の言葉たちの輝きがあまりに美しい。

教授のピアノは、詩人の精神的危機を表現するかのように、ピアノの弦に異物をあてるなど実験音楽的手法を用いて幕を開け、マラルメとも親交の深 かったドビュッシーを思わせる不協和音を鳴り響かせます。"世界のサカモト"になってもこうしたイベントに率先して参加される教授のスタンスはただひたすらにカッコイイ。

朗読、映像、音楽に絡まるのは、白井剛・寺田みさこ両氏の有機的な舞踏。コンテンポラリーダンスを見ることじたい久し振りなのもあってか、その独特のコレオグラフィから目が離せず。男性名詞であるMinuit(深夜)と女性名詞であるla Nuit(夜)をそれぞれに表現し、ときに鏡像のように向き合い、ときにコインの表裏のように入れ替わります。後年、ダンスや舞踏に並々ならぬ関心を抱いていたマラルメが見たら、お二人の優雅さを前に、きっと感動せずにはいられなかったことでしょう。

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虚無なる宇宙を映し出すスクリーンは2枚のパネルで成りたっていましたが、これが移動しはじめたときにはちょっとした異次元を体験した感じ。パネルの間をまるで敷居を 跨ぐようにすり抜けるパフォーマンスもあり、これがまた不思議な感覚。そういえば最新の宇宙論によれば、量子論をつきつめてゆくと多元宇宙の存在へといきついてしまうとか。詩人のイマジネーションと最新宇宙論の邂逅・・・なんてことをぼんやり想いつつ。

一回きりの公演、貴重な体験でした。特に終盤は全知覚にたたみかけてくるようで圧巻。会場を出た後、余韻に浸るため乗り物には乗らず、京都駅方面までひたすら歩いたのですが、碁盤目状の都市を歩くのもまた、詩による暗示と似て、どこか隠れた法則に導かれてゆくようで不思議な気持ちになるのでした。

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